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新英語教育研究会神奈川支部HP

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2012 望月正道さん:語彙習得

■5月春の1日研修会報告 2011年5月12日 大倉山記念館にて 参加者  34名

●講演:望月正道さん(麗澤大学教授)「英語語彙習得と指導」

 生徒が単語を憶えやすいように「例文で覚えさせる」「同意語・反意語も同時に教える」,あるいは「cemetery セミ採りに墓地へ」(笑!)のようなダジャレを利用するなど,従来から行われている「教師の経験知に基づく指導」だけではマズイと思っていてもそこから脱却できていない私たちに対して,「第二言語語彙習得研究を活かした方法を考えたい!」というのが望月先生のご提案でした。(会報担当・和田は会報をまとめ終わって,「…,そして具体的には?」という疑問が残りました。私の読み取りが浅かったのでしょうか…)

(1)語彙テスト
・ 語彙テストその1:語彙サイズを計るテスト The Vocabulary Size Test (Nation, 2007)   British National Corpus の1000語の中から10問ずつ14レベルを抜粋して作成。
http://www.victoria.ac.nz/lals/about/staff/paul-nation からダウンロード可能。日本語版,中国語版などがある。「語彙サイズ計算=正解数(140問ある)÷5×14,000」
レベルは無作為 選択肢 答
1. maintain: Can they [maintain it]!
a. keep it as it is
b. make it larger
c. get better
d. get it
a
2. defici
t: The company [had a large deficit].
a. spent a lot more money than it earned
b. went down a lot in value
c. had a plan for its spending that used a lot of money
d. had a lot of money stored in the bank
a

3. erratic: He was [erratic].
a. without fault
b. very bad
c. very polite
d. unsteady
d

4. excrete: This was [excreted] recently.
a. pushed or sent out
b. made clear
c. discovered by a science experiment
d. put on a list of illegal things
a

5. canonical: These are [canonical examples].
a. examples which break the usual rules
b. examples taken from a religious book
c. regular and widely accepted examples
d. examples discovered very recently
c

・ 語彙テストその2「fairという語から思いつく語を書く」
OALD (Oxford Advanced Learners’ Dictionary )によるfairの意味は9つ。
The Edinburgh Associative Thesaurus(http://www.eat.rl.ac.uk/)では「イギリスの学生100人に訊きました」のようなものを行っているが,fairで連想する語(fair stimulated the following associations)は,98人中,ground(13人),foul(6人),play(6人),dark(5人)のように検索できる。

・ 語彙テストその3「語彙アクセス速度」(聞いてすぐに分かる)
日本語を聞いて,英語を書く 答
a. 業績
b. 資産
c. 罪悪感
d. 職場
e. 偽装
a. performance
b. assets
c. guilt
d. workplace
e. disguise
 英語母語話者は1単語を約0.4秒で発音,0.2秒で認知。
・ 語彙力とは?:
1) 語彙サイズ(たくさん知っている)  2) 詳しく知っている 3) アクセス速度(素速く使える)
・ 語彙指導の範囲:1) 語彙サイズを大きくする  2) 単語を 詳しく教える 3) アクセス速度を早くする。
・ 望月先生のコメント:「以上のことは本に書いた。しかし,ちょっと違うかなーと思うようになった」とのこと。
・ 語彙習得は漸増的:Nagy and Herman(1987)の研究では「1つの単語の知識は一度に習得されない。単語に出会うたびに少しずつ蓄積される。」
・ 語彙サイズと知識の深さの関係:Vermeer[フェルメールはfarmerの意味だそうです](2001)の研究では「両者に概念的違いはない」。小泉(2005)『英語語彙の指導マニュアル』『英語語彙指導の実践アイディア集』(大修館書店)。Webb (2007)の紹介。
・ 母語を利用する:望月先生は東京外語大学で若林俊輔先生に教わった。埼玉の高校でAll Englishの授業をしたが生徒たちはついてこられなかった。その経験からも,またSchmitt (2008)「母語を第二言語習得に利用するのは理にかなったこと」という研究からも,「説明するときは母語で導入し,英語で練習へ」「次に聞かせたり,話させたり…」という流れが効果的だと思った。
・ 反対語や同意語は後で提示:語彙のネットワーク形成で意味的干渉が起こらないように反対語の提示は考える必要がある。望月先生はフランス語で右(droit)と左(gauche)で混乱した思い出があるとのこと。
・ 文脈から未知語を推測するには残りの98%知っている必要がある!
・ Schmitt (2008)「1つの語を覚えるには8~10回文脈の中で出会う必要がある」
・ 生徒には「未知語の推測」「辞書使用」「記銘時の処理の深さ(既存の体系に情報を組み込む,自分に関わりを持たせると覚えやすい)」を意識させ,「こつこつ続けるのが王道」であると説き,安心を与える。
参考文献 ・ 望月正道「24NCにおける語彙指導のあり方」http://tb.sanseido.co.jp/24/newcrown/pdf/ten/TEN_vol2_06.pdf


(2)質疑応答+意見交換
・ Q:単語帳は「めくるタイプ」「ノート型」,どちらがいいでしょうか?
A:好きな方で…。
・ 参加者:高3を担当している。授出てきた単語を覚えなさい,と言っている。『速読英単語』『速聴英単語』が良いと思っているが,気に入らないのは順番が逆なこと。「単語を覚えてからpassageを読む」
・ Q:単語集をさせようと思っている。テストはやるが評価に入れない,とした。1つの単語を10回書くと生徒は考えているが,「なぞり書き」も検討している。
A:生徒によって木の実が違う。見れば分かる生徒もいる。教師はさまざまな方法を提示していく。入試問題に訳をつけて読ませるなど,効率的になっている。
・ Q:辞書指導が入ってきたが,生徒は購入できない(全員が持っていない)。中学から高校で使える辞書を教えてください。
A:紙の辞書のコピーを配布して使い方を示す。「アルファベット順になっている」(アルファベットは辞書でしか必要ないので,生徒は覚えていない)。「用例がスクロールしなくてはいけない」(電子辞書が使いやすい)。「教科書にワードリストがある」。紙の辞書では『チャレンジ』『クラウン』。Exword(カシオ)を使っている。
・ Q:英検1級などで出題される抽象的な単語の覚え方は?
A:日本語での概念がなければ覚えられない。例えば,George Washington was a man of integrity.(完全無欠)やidentity(自己同一性)など。


(3)参加者の感想
 クイズ形式で大変楽しみながら拝聴しました。
 語彙指導に王道なしなのかもしれませんね。
 先生の講演を伺ったのは2回目でしたが,内容が深く分かってよかったです。お話に出てきた単語の覚え方を学生に伝えたいと思います。
 英文を理解するためにはそのパッセージの98%知ってなければ内容がわからないという話などで教える立場からの知識情報のお話が伺えてよかったです。
 自分が学習してきた方法が正しい訳ではないということが理解できました。今日の先生の講義を受けて学ぶ楽しさを思い出すことができました。生徒に学ぶ楽しさを伝えられるように授業を行なっていきたいです。今日は有難うございました。
 単語集(大学受験用)の中にも「リンガメタリカ」や「DATA BASE4500」のように背景知識まで網羅した良書が増えてきていますが…。
 教科書本文の重要語句についての解説を板書せずに口頭で話をしてメモを取らせる形式で展開したところ,内容理解・和訳・要約の力が高まった生徒が多くなりました。
 Oral Introduction / Oral Reading / Retelling などの表面的な指導スタイルばかりに目を奪われてPresentationに必要な語彙やテーマ背景知識の習得が軽視されている学校教員が目立っていると思いました。
 先生が理想とする「単語集」とはどんなものですか。
 いかに我々は生徒に「無茶ぶり」で教えているかがわかりました。単語集がリーディングやリスニングに結びつかないという意味で効果が期待できないというご意見に…(←途中までしか書いてありませんでした!)
 SLAは関心があったので新しい情報を得ることができて良かったです。今後は学んだことを活かしていきたいと思います。ありがとうございました。
 単語の覚え方と思考回路との関係などよく理解できました。自分の勉強不足がよくわかったので,これから努力していこうと思いました。
 楽しみながらすぐに実践できる指導法を学べました。生かせるよう工夫します。
 理論と実践,両方がバランスの良い発表があって,大変わかりやすかったです。ありがとうございました。
 大変勉強になりました。いつもこういうものに参加するのはとても新鮮です。特に定着活動はヒントになりました。さっそく語呂合わせの覚え方も作って,復習プリントをつくります。
 本日はありがとうございました。日頃「これが正しいだろう」と思っていたことが,統計的には「そうでもない」という例がいくつかあり,思い込みの指導は危ないなと思いました。同時に理論に裏付けされた授業創りに強く魅力を感じたので,大学での勉学により励もうと思えました。
 理論に裏打ちされた自薦的な指導法でためになりました





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